1年高値 | 515 円 |
1年安値 | 228 円 |
出来高 | 865 千株 |
市場 | マザーズ |
業種 | 医薬品 |
会計 | 日本 |
EV/EBITDA | N/A |
PBR | 2.4 倍 |
PSR・会予 | 38.5 倍 |
ROA | N/A |
ROIC | N/A |
営利率 | N/A |
決算 | 3月末 |
設立日 | 1996/6/14 |
上場日 | 2008/3/5 |
配当・会予 | 0.0 円 |
配当性向 | 0.0 % |
PEGレシオ | N/A |
当社の主たる事業目的は、日本発のナノテクノロジーを応用したミセル化ナノ粒子をコア技術として、主にがん領域において新しい医薬品を生み出し、社会に貢献することです。
(1) 当社設立の経緯
当社は、東京大学の片岡一則教授、東京女子医科大学の岡野光夫教授(現 当社取締役)らが発明したミセル化ナノ粒子技術による医薬品の開発を目的に、代表取締役社長CEO 中冨一郎が、上記の発明者らとともに1996年6月に設立しました。
同教授らは、医薬品を封入したミセル化ナノ粒子が静脈内投与された場合、血中に薬物が長時間循環することができ、効果が持続する薬物キャリア(*1)となり得ることと、がん組織等の病変部へ集積(標的化)することを示しました。
当社では、同技術を利用した医薬品の実用化によって、従来の薬物療法より有効性と安全性が高まれば、これまで期待する効果が得られなかったがん等の難治性疾患の薬物療法をより有効にすることができると考えており、今後もミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)(*2)技術のパイオニアとして同技術のポテンシャルを最大限に活かした製品開発を目指すとともに、当面は社会的ニーズと貢献度の高い抗がん剤事業に特化したグローバル展開を行っております。
(2) 当社技術の特長
当社のコア技術であるミセル化ナノ粒子は、水に溶けやすい性質を示すポリエチレングリコール(PEG)からなる親水性ポリマーと水に溶けにくい性質を示すポリアミノ酸からなる疎水性ポリマーを分子レベルで結合させたブロックコポリマー(*3)から構成されます。
ブロックコポリマーを水中で拡散すると、外側が親水性で内側が疎水性という明確な二層構造を有する20~100ナノメートル(nm)(*4)サイズの球状の集合体であるミセルを形成します。このミセルの疎水性内核部分に薬物や生理活性物質を封入することができます。アミノ酸の種類や構造を化学的に変化させることで様々な化合物に対応が可能です。表面をPEGが覆うことで血液中での安定性を確保します。
ミセル化ナノ粒子を応用した医薬品開発の新薬開発上のメリットとしては、ミセル化ナノ粒子内からの薬物放出をコントロールすることで、副作用を引き起こす濃度以下に調整し安全性を高めるアプローチや、投与後の消失の速い薬物などの血中持続性を高めるアプローチ、腫瘍などへの薬物の移行量を増やすことで効果を高めるアプローチなどが期待できます。
ミセル化ナノ粒子を利用した抗がん剤開発の患者に期待されるメリットとしては、患者の生存期間の延長やがん関連症状の緩和へつながる治療効果の増大、安全性の向上(=副作用の軽減)、簡便な投与で通院治療が可能になるなどの負担軽減、日帰り治療の可能性などから医療費削減など、患者のQOL(*5)の向上を目指します。
<ミセル化ナノ粒子のサイズ>(当社作成)
(画像は省略されました)
<ミセル化ナノ粒子の一例>
(画像は省略されました)
(3) 当社の事業展開
① ビジネスモデルとその収益について
当社は、ミセル化ナノ粒子技術を特許等の知的財産として所有しており、ナノテクノロジーを応用した製造技術を基盤に創薬の研究開発を進め、事業化を行っています。当社では、有用性(有効性、安全性)を向上させた、医療ニーズに応える新規医薬品の開発、提供を目指しており、パイプラインの研究・開発を進めて製品化に到達するために、事業段階に応じた展開を図っております。
当社の現状のビジネスモデルは、ミセル化ナノ粒子技術を基盤とした(ⅰ)自社開発、(ⅱ)共同研究開発、(ⅲ)ライセンスアウト、(ⅳ)ライセンスインの4つの形態をとっております。それぞれの内容は以下のとおりです。
(ⅰ)自社開発
開発医薬品の上市もしくは臨床開発後期段階まで自社開発を推進することにより、製品付加価値が上がり、より大きい収入を確保することができます。しかしながら、これには多額の費用と人員を要することから、下述(ⅱ)の共同研究開発、(ⅲ)のライセンスアウトへ移行することも選択肢となります。
(ⅱ)共同研究開発
当社のミセル化ナノ粒子製剤技術に興味を示した提携先とミセル製剤化に関する共同研究契約を締結する場合もあります。
この場合、提携先が所有する活性成分又は開発可能な活性成分を当社のミセル化ナノ粒子技術に応用し、新規医薬品として開発を進めます。フィージビリティスタディ段階からさらに先に進め、共同研究開発契約やライセンスアウトに進展することを目指しております。
(ⅲ)ライセンスアウト
(ⅰ)の自社開発あるいは(ⅱ)の共同研究開発の事業形態においては、研究開発の経過段階で、ライセンスアウトを行います。この場合は、ライセンス契約時点までの知的財産権を含む研究開発成果及び製造権の実施許諾に対する契約一時金(アップフロント)、所定の開発段階に到達したときに支払われるマイルストーン収入、医薬品上市後の販売高に対するロイヤリティ収入や製剤供給収入等が計上されることになります。
ライセンス契約による提携は、当社が保有する特許権及びノウハウについての実施許諾、さらに当社が独占的な実施権を有する特許権の再実施許諾がベースになります。ライセンス契約後の研究開発等の経費は提携先が負担することになり、当社の開発コスト及び開発リスクが軽減されます。
(ⅳ)ライセンスイン
(ⅲ)のライセンスアウトとは逆に、ミセル化ナノ粒子技術以外の他社が保有する有望な技術やパイプラインを導入し、当社が開発を行います。この場合は、当社が医薬品の承認・販売まで行えば多額の販売高を計上することになりますが、ライセンス元に対して当社がアップフロント、マイルストーン、販売高に対するロイヤリティや製剤供給費用を支払うことになります。また、一定の開発段階や承認後の販売段階で(ⅲ)のライセンスアウトに移行することもあります。
ライセンスインについては、開発後期段階の有望な医薬品候補を導入するため一定の費用が発生しますが、初期段階から開発を行うよりも短期間での上市が期待できるため、当社の収益の安定化に寄与するものと考えております。
各ビジネスモデルの収益については、医薬品の上市まで自社開発を行い、自社販売を行った場合、当該製品の販売による収入が計上されることとなりますが、当社においてはその段階まで進んでいるパイプラインはありません。
共同研究開発の場合には、提携先からの研究開発に対する製剤技術及びノウハウの開示による対価並びにミセル原薬及び製剤の供給収入が計上されることとなり、当社においては複数のパイプラインで当該収入を得ております。
他社にライセンスアウトをする場合は、ライセンス契約時点までの研究開発成果に対する対価及び製剤の供給に対して提携時の契約一時金、所定の開発段階に到達したときに支払われるマイルストーン、開発医薬品上市後の医薬品販売高に対するロイヤリティ等の収入が計上されることになり、当社においては契約一時金や臨床試験開始に伴うマイルストーン収入を得ているパイプラインがあります。
当社では、開発医薬品の上市前に上述のような他社からの契約一時金収入、マイルストーン収入及び研究開発用の製剤供給に対する対価を得ることにより、開発医薬品上市前の研究開発費の負担を軽減し、財務面のリスクの極小化を図っております。
② 抗がん剤への特化について
抗がん剤の発見と開発の分野は製薬業界の研究開発の中でも最も活発な分野のひとつであり、近年開発が進められている新薬のなかでも、抗がん剤の占める割合は高いものの、未だ製品の改良や新規開発領域の残された分野でもあります。抗がん剤の中には、世界中の医療現場で汎用されながらも、薬物自体及び製剤化のために添加されている溶解剤による副作用が問題となっているものが多数あります。その中から当社は、タキサン系、白金系及びアントラサイクリン系の抗がん剤を選び、ミセル化ナノ粒子医薬品の開発を行っております。また、がん組織への選択性を高めるために、がん標的性のある抗体(*6)などをミセル化ナノ粒子の表面に結合させ、がん細胞への特異的な集積(アクティブターゲティング)(*7)を狙った次世代の抗がん剤を研究・開発しております。最近では、高分子化合物のsiRNA(*8)、あるいは各種サイトカイン(*9)などのタンパク質医薬品の開発を行っており、体内ですみやかに分解されてしまうという体内投与時の欠点を補うミセル製剤の開発を進めています。
③ その他領域における開発と販売について
ミセル化ナノ粒子技術を応用した化粧品開発を行い、株式会社アルビオンとの共同開発に基づき、同社より販売中の化粧品原料を供給するとともに、同社との共同開発品であるスカルプトータルケア製品の販売を行っております。
抗がん剤以外での早期収益化に向けた他技術の取り込みによる後期ステージパイプラインの拡充にも注力しており、セオリアファーマ株式会社との間で耳鼻科領域医薬品の共同開発を行っております。
④ 研究機関及び提携企業との連携について
当社は、大学発の研究成果(シーズ)を医薬品として実用化するために、積極的に大学あるいは国公立研究機関から知的財産権のライセンスイン(独占的実施許諾権の獲得)及びこれら研究機関との共同研究を行っております。一方、上記のライセンスインをした知的財産権や共同研究の成果を提携企業に対してライセンスアウトする場合があります。また、これらの知的財産権や成果に基づき提携企業と共同開発を実施する場合もあります。それらの提携関係は下図のとおりです。
(画像は省略されました)
(当社作成)
⑤ 製造について
当社は自社開発医薬品、提携企業との共同開発医薬品にかかわらず、原則として自社が所有、又は独占的実施権を有する特許やノウハウを利用して製品(ミセル原薬及びその中間体、あるいは最終製剤)の製造を自社で行うことを目標としております。しかしながら、自社工場を所有することはその投資の大きさ、固定費の増加等から現状では現実的ではないと考えており、既に設備を保有し、GMP(*10)基準を満たしている医薬品製造受託企業との間で製品の製造委託契約を交わし、製品製造を委託しております。但し、委託製造といっても、全面的な委託ではなく、当社による原料供給、技術提供及び製造管理を行っており、原材料の受け入れから最終製品の品質保証まで当社が行っております。
⑥ 医薬品開発の流れ
医薬品を研究・開発する標準的な段階は以下のとおりであり、日本製薬工業協会資料を参考に表示しております。この開発段階は日米欧でほぼ共通となっております。
<医薬品開発の流れ>
(画像は省略されました)
<各事業ステージの内容>
⑦ 当社の主要パイプラインについて
本書提出日現在、当社が研究開発を進めている主要パイプラインは以下のとおりです。
(ⅰ)シスプラチンミセル(NC-6004)
シスプラチンは、その有効性により各領域のがん化学療法の中心的薬剤となっています。その一方でシスプラチンの腎機能障害、神経障害や催吐作用が極めて強いため、がん患者にとって苦痛度が高く、さらに投与の際には長時間にわたる大量の輸液が必要なことから、患者の方々の生活の質(QOL)を著しく低下させています。
当社は、シスプラチンが持つこれらの副作用を軽減し、かつ抗腫瘍効果の増強も期待できる新薬を目指し、ミセル化ナノ粒子(MediCelle®システム)を応用した新規化合物シスプラチンミセル(NC-6004)を開発しています。
(ⅱ)エピルビシンミセル(NC-6300)
エピルビシンは、乳がん、卵巣がん、胃がんなどの適応症で世界的に普及しているアントラサイクリン系抗がん剤ですが、投与を重ねると心臓疾患を引き起こすので、その使用が制限されています。
当社は、その副作用を軽減するために細胞内のpH変化に応答して薬物を効果的に放出するシステムを開発しています。細胞内に薬物が結合したミセル化ナノ粒子素材(ブロックコポリマー)が取り込まれる際に、エンドソームと呼ばれる細胞膜が陥没して形成される小胞に取り込まれると考えられています。エンドソーム内のpHは酸性であることが知られており、このpHの低下により薬物とブロックコポリマーの結合が外れて、薬物が放出される作用機序を利用し、時限的かつ急激に薬物をがん細胞内に放出する効果が期待されます。
(ⅲ)VB-111
Vascular Biogenics Ltd.(イスラエル)からライセンスを受けた遺伝子治療薬です。当社のミセル化ナノ粒子製剤は、腫瘍細胞を標的にした治療薬を目指しているのに対し、VB-111は腫瘍血管を標的としてがんを兵糧攻めにするとともに、腫瘍免疫を惹起する効果が期待されます。ミセル化ナノ粒子とは異なるメカニズムによる治療薬をパイプラインに持つことで、がん領域における当社の選択肢が拡がり、当社の将来的な経営基盤強化に資するものと考えております。
(ⅳ)ENT103
セオリアファーマ株式会社との共同開発パイプラインです。同社が有する中耳炎を対象疾患とした抗菌点耳薬であり、抗菌活性物質濃度は従来品の10倍程度あり、高い有効性が期待されるとともに、短期間で製造販売承認を取得することも期待されます。
(ⅴ)パクリタキセルミセル(NK105)
パクリタキセル(タキソール®)は乳がん、卵巣がん、肺がん、胃がんなどの適応症で世界的に普及している抗がん剤ですが、水に溶けにくいため、製剤化にはアルコールを基にした特殊な溶媒が使用されております。その溶媒による副作用が生じることがあり、投与時に副作用軽減のための補助薬剤(ステロイド剤、抗ヒスタミン剤及び抗潰瘍剤)を投与するなど医療現場での使いにくさがあります。当社はミセル化ナノ粒子技術(NanoCap®システム)を応用することにより、パクリタキセルを封入したミセル化ナノ粒子を開発しました。
現在、ライセンスアウト先である日本化薬株式会社において開発が進められております。
(注)「MediCelle®」及び「NanoCap®」は当社の登録商標です。
⑧ 次世代パイプライン候補について
上述の臨床開発段階又は臨床試験計画中の主要パイプラインに続く次世代のパイプライン候補として、以下の研究開発を推進しております。
(ⅰ)ADCM(センサー結合型ミセル)
ADCM(Antibody/Drug-Conjugated Micelle)は、アクティブターゲティングを可能とする次世代型プラットフォーム技術で、世界的に開発が活発化している抗体医薬ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)の課題を補う次世代型DDS技術です。標的細胞を狙ったターゲティング療法であるADCMは、がん細胞に現れる特異的な抗原を認識する抗体をミセル化ナノ粒子表面に結合し、標的細胞への選択性を高めることができます。抗体と薬物が結合した従来のミサイル療法より多くの薬物を標的細胞に届けることができるため、高い効果と副作用の軽減が期待されております。
(ⅱ)siRNAミセル
siRNAなどの核酸医薬は血中に投与すると直ちに代謝を受けて血中から速やかに消失し、充分な薬効を期待できず、医薬品として開発する場合は血中での安定化が必要不可欠となっております。当社では、siRNAなどの核酸医薬をミセル化ナノ粒子へ封入する技術で血中での安定化を図ります。また、がんや炎症部位に選択的に薬物を運ぶことで薬効を高めることが期待されます。
用語解説
(*1)薬物キャリア
薬物を封入するなどして、組織へ送達するためのシステムであり、薬物運搬体とも呼ばれます。当社のミセル化ナノ粒子や、リポソームなどが含まれます。
(*2)高分子ミセル
高分子ミセルとは、水に溶けやすい部分と水に溶けにくい部分を持つブロックコポリマーから形成される球状構造体のことです。水にも油にも溶ける両親媒性ブロックコポリマーを水に溶かすと、ある濃度範囲で外側に水に溶けやすい部分、また内側に水に溶けにくい部分を向けて自己会合し、明確な内核と外殻の二重構造を持つ球状構造体を形成します。この球状構造体を高分子ミセルといいます。
(*3)ポリマー
ポリマーとは、1種類の単位化合物の分子が共有結合して、分子量が1万程度以上の化合物のことです。代表的なポリマーとしてはプラスチック類が挙げられます。医薬品として使われるポリマーは、生体内で分解される性質を有するものが多く存在します。
ブロックコポリマーとは、2種類以上の異なるポリマーが結合したものであり、当社のポリマーは、水に溶けやすい親水性部分がポリエチレングリコール、水に溶けにくい疎水性部分がポリアミノ酸からなるブロックコポリマーです。
(*4)ナノメートル(nm)
1ナノメートルは10億分の1メートルに相当します。
(*5)QOL
Quality Of Lifeの略語で、主に患者の「生活の質、人生の質」を意味する言葉です。医療提供者が患者への治療効果を判定する際に、患者の人生の充実感や満足度から評価しようという考え方のことを言います。
(*6)抗体
抗体は、細菌やウイルスなどの抗原(免疫を誘発する物質)の刺激の結果、免疫反応によって生体内に誘導されるタンパク質で、抗原と特異的に結合する活性を持つものの総称です。
(*7)アクティブターゲティング
アクティブターゲティングとは、例えば、がん細胞と選択的に結合するセンサーのような働きをする物質をミセル化ナノ粒子の表面に付けることで効率よく、積極的にがん細胞へ薬物を入れたミセル化ナノ粒子を送り届けることをいいます。センサーのような働きをする物質には抗体のような物質を使うことができます。
(*8)siRNA
siRNAとは、標的となる遺伝子の一部と同じ配列を有する短い二本鎖RNAのことで、遺伝子の働きを強力に抑制する特徴を有しています。がんなどの疾患では、疾患に関係する遺伝子が過剰に働くことが原因とされているものが多いため、標的遺伝子を強力に抑制することができるsiRNAは、次世代の核酸医薬として、近年特に期待が高まっています。
(*9)サイトカイン
サイトカインとは、体の中の細胞から放出される、体の機能を制御するタンパク質の総称です。免疫機能、抗腫瘍作用、造血機能などを制御する機能を有するものが知られています。
(*10)GMP
ICH(日・米・EUの3極間で、新医薬品の製造承認に際して要求される資料を共通化することによって、医薬品開発の迅速化・効率化を目指す会議)によって協議・合意決定された取り決め事項を「ICHガイドライン」と呼び、日米EUでの医薬品開発におけるガイドラインとしての役目を果たします。ICHガイドラインは以下のような構成となっており、GMPはその一部です。
当社は、「ナノテクノロジーを用いて新しい医薬品を創出し、人々の健康とQOLの向上に貢献する」ことをミッションとし、「がん領域のイノベーションファーマとして、世の中に必要とされる『ファーストワン』を目指す」ことをビジョンに掲げ、事業を推進しております。
当社は、既存事業であるミセル化ナノ粒子技術をコア技術とした医薬品開発を推進しつつ、引き続き提携等により、事業領域の拡大や新規事業分野への進出を効率的かつスピーディーに実施することで、さらなる成長を目指すことが必須と考えており、以下を対処すべき課題と認識しております。
シスプラチンミセル(NC-6004)及びエピルビシンミセル(NC-6300)については、最優先プロジェクトとして早期の承認・上市を実現することにより、当社の企業価値を最大限に高めるという認識のもと、これらの臨床開発を引き続き推進してまいります。研究開発プロジェクトの推進においては絶えず技術・事業性の観点からプロジェクトの優先順位付けを行い、その成果を主要パイプラインに引き上げ、パイプラインの拡充を目指します。
事業開発活動の推進により、ライセンスアウトや共同開発を行うことができる提携先の開拓を引き続き継続し、早期の収入確保を目指します。提携先の開拓に当たっては、国内外の幅広いネットワークを活用し、製薬企業等との提携、当社と相乗効果があるテクノロジーやパイプラインの探索及び獲得を進めるとともに、外部からの製品パイプラインの導入や製薬・バイオ企業への投資・買収等も視野に入れ、事業・商品ポートフォリオの拡充を目指します。
当社は、独自技術を基盤とした研究開発型国内バイオベンチャー企業から、画期的な医薬品を全世界に向けて一貫して開発、製造そして販売する製薬会社への進化を遂げるべく、医薬品会社に求められる経営基盤(開発、製造、販売体制等)の構築が急務であると考えております。医薬品事業の経営基盤構築や関連事業や周辺事業の拡大を加速させるためには、当社の内部経営資源を最大限に活用するとともに、有力な企業との資本・事業提携、M&Aを通じた外部経営資源の活用や外部成長の取り込みを図っていくことが有力な選択肢になると考えており、引き続き検討を進めてまいります。
(4)技術の応用範囲の拡大
医薬品以外の分野にも研究開発の応用範囲を広げ、特に化粧品事業の分野において既存製品の販売拡大と新製品開発を実現することにより、より安定した収入源の確保を目指します。
当社のビジョン実現のため、経営の効率性を高めつつ、株主及び投資家、患者、地域社会、取引先、従業員等の各ステークホルダーとの間の良好な関係を保ち、企業としての社会的責任を果たすため、コーポレート・ガバナンスの充実に努めます。
(6)財務安定性の確保
当社は継続的に研究開発投資を行っており、今後も多額の投資が見込まれます。投資資金の確保につきましては、事業活動から稼得される収益から確保すべく最大限の努力を行いながら、効率的かつ効果的な手法による資金調達を行うことにより、財務安定性を確保していきます。
以下において、当社の事業展開その他に関してリスク要因と考えられる主な事項を記載しています。また、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、本株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。
また、文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
1.会社の事業内容について
(1)現在の事業内容
① 提携候補先とのライセンス契約の締結について
当社は、ミセル化ナノ粒子技術を特許等の知的財産として所有しており、有用性(有効性、安全性)を向上させた医療ニーズに応える新規医薬品を提供すべく、ナノテクノロジーを応用した製剤技術を基盤に創薬の研究開発を進めております。また、当社技術と関連性が深く、相乗効果の見込める他社技術の導入も行っております。各パイプラインの研究開発を進めて製品化に到達するために、当社は事業段階に応じた展開を図っており、現状のビジネスモデルは、(ⅰ)自社開発、(ⅱ)共同研究開発、(ⅲ)ライセンスアウト、(ⅳ)ライセンスインの4パターンとなっています。
上記のビジネスモデルのうち、(ⅱ)共同研究開発、(ⅲ)ライセンスアウト及び(ⅳ)ライセンスインに関しては、事業展開上、各パイプラインにおける提携候補先との共同研究開発契約、若しくはライセンス契約の締結時期及び条件は、当社の事業計画に重大な影響を及ぼすこととなります。また、契約を想定通りに締結できなかった場合や想定通りに契約を締結できた場合であっても提携先とのその後の方針の不一致等により共同研究開発契約等が解消された場合にも、経営成績及び財政状態並びに開発計画等に重大な影響を与えることとなります。
② 既存の化合物を利用することによる医薬品開発のリスク低減について
当社が取り組むプロジェクトの主たるものは、既に薬効が確認されている化合物をベースにミセル化ナノ粒子技術と融合させ、新剤型医薬品、あるいは新有効成分としていることから、当社では、全く新規(この世の中に存在していなかった)の構造を有する化合物に比して、医薬品とするための開発リスクが低く、成功確率が高いと考えております。
しかし、長期の開発期間中に管轄当局の規制方針の変更などにより、開発リスクや成功確率が当社の想定通りの水準におさまるとは断定できず、当社の想定以上に開発リスクが高くなった場合、あるいは成功確率が低くなった場合には、当社の事業展開に支障を及ぼすこととなります。
③ パイプラインの拡充について
当社は、薬物と当社のポリマーを結合させて新有効成分とする研究開発の過程で生じる新しい発明の特許出願を行い、排他性を確保することが重要になります。当社ではこれらの特許等に裏付けられた技術をベースにパイプラインを増やしていく必要があると考えています。しかし、想定通りに特許等に裏付けられたパイプラインを増やしていけるかどうかは不確定であり、また、各パイプラインの研究開発を想定通りに進めていけるという保証もありません。想定通りにパイプラインを増やせなかった場合、あるいは各パイプラインの研究開発が想定通りに進められなかった場合、当社の事業展開は悪影響を受けることになります。
④ 医薬品の申請区分に関する評価について
当社は既存化合物だけではなく、新薬についても当社技術と融合して新有効成分とする医薬品の開発を目指しており、申請区分については、当社開発中の製品のほとんどが新規化合物になると考えております。しかしながら、実際に想定通りの評価が得られるとは限らず、管轄当局より、当社想定通りの評価を得られなかった場合、当社の事業展開は影響を受ける可能性があります。
(2)当社の医薬品の開発状況について
① 当社のパイプラインについて
当社には、現在まで上市された承認済の医薬品はありません。当社の主要パイプラインは、シスプラチンミセル(NC-6004)、エピルビシンミセル(NC-6300)、ENT103及びパクリタキセルミセル(NK105)であり、この他臨床試験計画中や基礎研究中の新規開発パイプラインがあります。当社のパイプラインは全て、未だ研究開発途中であり、将来、医薬品として上市される保証はなく、臨床試験段階における重篤事象の発生等による開発中止の可能性や、開発遅延の可能性もあります。また、当社がライセンス・提携先との契約を解消した場合は、当社の研究開発活動に遅延が生じることで、当社の開発計画及び業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、先行して臨床開発段階に入っている上記パイプラインの承認の可否は、当社事業に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
さらに、日本及び海外の両地域で展開予定のパイプラインについては、先行地域の臨床開発が遅延した場合、後続地域の臨床開発遅延につながる可能性もあり、当社の事業計画の進捗に影響を及ぼすおそれがあります。
また、当社パイプラインが将来医薬品として上市されたとしても、当該医薬品が市場から受け入れられる保証はなく、各国における医薬品承認制度や知的財産制度等の影響を受ける可能性もあるため、当該医薬品が当社の想定通り製造及び販売される保証はありません。
② 第三者への依存について
当社は、当社が開発する医薬品の臨床試験については、開発業務受託機関にその実施を委託しており、また、臨床試験に用いる治験薬については、医薬品製造受託機関等にその製造を委託しております。開発業務受託機関又は医薬品製造受託機関等がこれらに課せられる各種規制等を遵守できない場合、当社と開発業務受託機関又は医薬品製造受託機関等との契約が終了し、当社が別の開発業務受託機関又は医薬品製造受託機関等と当社が望む条件で契約を締結できない場合等において、当社の想定通り臨床試験が進まない可能性があります。また、上市後の医薬品の製造についても、医薬品製造受託機関等との関係では、上記の要因による影響を受ける可能性があります。
また、上市後の医薬品の販売等について当社は第三者に販売権をライセンスアウトし、ロイヤリティ収入を得ることを想定しておりますが、かかる第三者とライセンス契約を締結できる保証はありません。また、第三者との間で販売にかかるライセンス契約を締結できない場合には、当該医薬品の販売等を自社で行う必要がありますが、この場合には、自社販売体制の構築等に想定外の費用が発生し、想定通りに販売が進まない可能性があります。
(3)化粧品事業の展開について
当社はミセル化ナノ粒子技術の応用範囲を広げ、株式会社アルビオンとの共同開発により、化粧品事業を展開しております。当社は、同社に対し、化粧品原材料の供給を行うとともに、同社から共同研究開発製品を仕入れ、最終消費者への販売を行っております。
① 競合について
化粧品業界は、参入障壁が低いこともあり、激しい企業間競争にさらされております。当社は既存の製品にない画期的な商品を開発し、株式会社アルビオンの持つブランド力、マーケティング力及び販売力を生かして、化粧品事業を推進していく所存ですが、当社の製品が顧客のニーズに合致せず、市場から受け入れられない場合には事業計画通りの売上を達成できず、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 当社製品及び原材料の品質及び安全性について
当社の製品及び原材料の品質や安全性について疑義が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、結果的に当社の製品及び原材料に品質欠陥や安全性に関する問題が生じなかった場合においても、風評被害等により、同様の影響を受ける可能性があります。
③ 株式会社アルビオンへの依存について
現在の当社化粧品事業は、株式会社アルビオンとの共同開発及び共同事業によるものが主であり、同社との契約が終了し、当社が望む条件で契約を締結できない場合等において、当社事業計画の達成に影響を及ぼす可能性があります。
(4)今後の事業の見通しについて
当社は早期の新薬の製造販売承認を目指して研究開発を進めておりますが、新薬の開発には長期にわたり多額の研究開発投資を要します。2018年4月に実施した第三者割当による新株予約権発行、2019年5月に実施した第三者割当による転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権の発行等により当面の研究開発資金の確保に目処はつきましたが、研究開発が計画通り進捗する保証はありません。研究開発が計画通りに進捗しない場合、新薬の製造販売承認の時期も不確定となるため、計画通りに新薬の製造及び販売が行われる保証はありません。
なお、製造販売承認が得られなければ開発コストを回収できないこととなり、また製造販売承認が得られても、当社の事業計画上の目標売上を達成できない可能性もあります。
(5)特定の取引先への依存について
① 特定の販売先への依存について
当社の主な販売先は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(生産、受注及び販売の状況)(3)販売実績」に記載のとおりであり、Orient Europharma Co., Ltd.、株式会社アルビオン等が挙げられますが、これらの会社が今後、当社との取引を継続的に行う保証はありません。よってこれらの会社の当社との取引方針の変更、収益動向の変化又は事業活動の停止などにより、当社の業績に重大な影響が生じる可能性があります。
② 特定の仕入先への依存について
当社の原料及び研究用試薬並びに化粧品の主な調達先は、株式会社SENSE、一丸ファルコス株式会社、家田化学薬品株式会社等が挙げられますが、これらの会社が当社との取引を今後も継続的に行う保証はありません。よってこれらの会社の当社との取引方針の変更、収益動向の変化又は事業活動の停止などにより、当社の研究開発活動に遅延が生じ、当社の業績に重大な影響が生じる可能性があります。
(6)経営成績及び財政状態について
当社は1996年6月14日の設立以降一貫して医薬品の開発を目指した研究開発活動を行っており、現在まで毎期研究開発費を中心とした費用が収益を上回り、当期純損失を計上する状態が続いています。また営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスの状況が続いています。
現時点における当社の収益は、当社が第三者と締結した共同研究開発契約及びライセンス契約に基づく契約一時金及びマイルストーン収入に依存しており、今後提携候補先とこれらの契約を締結できない場合や契約の相手先がこれらの契約に定められたマイルストーンを達成できなかった場合には、契約一時金の支払いやマイルストーン収入を受けられない場合があります。このような場合には、当社の純損失が想定よりも拡大する場合があります。
(7)マイナスの繰越利益剰余金が計上されていることについて
当社は研究開発型のベンチャー企業であり、臨床段階にあるパイプラインが上市され、ロイヤリティ収入等の安定した収益を受ける体制となるまでは、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため連続して当期純損失を計上しており、当事業年度末において、マイナスの繰越利益剰余金を計上しております。
当社は、パイプラインを計画通り、迅速、効率的かつ着実に推進することにより、早期の利益確保を目指しておりますが、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、当社の事業が計画通りに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。
(8)資金繰りについて
当社は研究開発型企業として、自社研究や研究機関との共同研究開発等を行っておりますが、多額の研究開発資金を必要とします。そのため、事業計画が計画通りに進展しない等の理由から想定したタイミングで資金を確保できなかった場合には資金不足となり、当社の資金繰りの状況によっては事業存続に多大な影響を与える可能性があります。
(9)税務上の繰越欠損金について
当社には税務上の繰越欠損金が存在しております。繰越欠損金は、一般的に将来の課税所得から控除することが可能であるため、繰越欠損金を利用することにより将来の税額を減額することができます。しかしながら繰越欠損金の利用額と利用期間には、税務上、一定の制限も設けられております。よって計画通りに課税所得が発生しない場合、繰越欠損金を計画通り利用できないこととなるため、通常の税率に基づく法人税等が課税されることになり、当期純利益やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(10)競合について
当社はミセル化ナノ粒子技術をコアとして、現時点では抗がん剤に特化した医薬品開発を実施しております。抗がん剤を含めた新規医薬品の市場は国内外を問わないことから、日本国内のみならず世界中の同業他社と競合状態にあります。タキソール系のパクリタキセル、あるいはシスプラチンなどの白金系抗がん剤をリポソーム化した新規製剤や、類似の薬物を用いた経口剤がいくつか開発されており、当社の開発品目にとって、これらは競合する可能性があると考えます。当社としては、早期の新薬開発、発売を目指しておりますが、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を当社より先に販売した場合や、当社製品の販売後にこれを上回る製品が販売された場合、当社が新製品を発売しても期待通りの収益をあげることができない可能性があります。
2.経営上の重要な契約等
当社のビジネス展開上、重要と思われる契約の内容については、「4 経営上の重要な契約等」に記載のとおりです。当社事業計画はこれらの契約に基づく収入等を前提に策定しているため、これら重要な契約の破棄が行われた場合、当社にとって不利な契約変更が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
3.当社の組織体制について
(1)人材の確保について
当社の競争力の核は研究開発力にあるため、専門性の高い研究者の確保が不可欠であります。同様に、事業拡大を支えるために、事業開発、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。当社は、優秀な人材の確保及び社内人材の教育に努めていきますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画通りに進まない場合には、当社の業務に支障をきたすおそれがあります。
(2)小規模組織であることについて
当社は小規模組織であり、研究開発体制及び社内管理体制も、この規模に応じたものとなっております。
そしてこのように限られた人材の中でも業務遂行体制の充実に努めておりますが、限られた人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が大量に退職した場合には、当社の業務に支障をきたすおそれがあります。
一方、急激な規模拡大は、固定費の増加につながり、当社の業績に影響を与えるおそれがあります。
(3)特定人物への依存について
当社の事業の推進者は、代表取締役社長CEOである中冨一郎であります。中冨は当社の経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の推進において、当社の最高責任者として影響力を有しております。このため当社は中冨に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っておりますが、中冨が何らかの理由により当社の業務を継続することが困難となった場合には、当社の事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
(4)アドバイザー及び顧問について
当社は社外の研究者とアドバイザー契約又は顧問契約を締結しており、最先端の研究成果を当社の研究開発に生かせる体制を整えております。
アドバイザー契約及び顧問契約は単年度ごとの契約になっておりますため、何らかの理由で契約の更新ができなかった場合等、契約を継続できなくなった場合には、当社の研究開発に影響を及ぼす可能性があります。
(5)M&Aについて
当社は、医薬品事業の経営基盤構築及び関連事業や周辺事業の拡大のため、有力な企業との資本・事業提携、M&Aを通じた外部経営資源の活用や外部成長の取り込みを図っていくことが有力な選択肢になると考えており、検討を進めております。また、外部からの製品パイプラインの導入や製薬・バイオ企業への投資・買収なども検討しておりますが、かかる投資・買収が成功裏に完了する保証はありません。
4.知的財産権について
(1)当社の特許戦略について
当社は、特許によって他社に対して優位性をもち、他方、他社の権利を尊重しつつ自社の権利行使を推し進めます。
当社が現状臨床開発を推進しているパイプラインは、当社が保有又は当社が他者からライセンスインをしている特許権若しくは特許出願を基礎とするものであり、これらの特許は医薬品市場の大きい米国、ヨーロッパ、日本及びアジアを中心に出願されております。
しかしながら、当社が保有及びライセンスインをしている現在出願中の特許が全て成立するとは限らず、また、当社が事業活動を行う全ての地域又は競合相手が存在する全ての地域において特許を出願しているわけではありません。また、特許が成立しても、当社の研究開発を超える優れた研究開発により当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は、常に存在しております。さらに、当社の特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合や成立した特許権が事後的に取り消されたような場合には、当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社の展開する主要パイプライン及び新規開発パイプラインに関して、必要な他者所有の特許については、ライセンスインをしております。
さらに、当社の今後の事業展開の中でライセンスインする必要のある特許が生じ、そのライセンスインができなかった場合や、多額の実施料の支払いが必要になった場合には、当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)知的財産権に関する訴訟、クレーム等について
当事業年度末現在において、当社の開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。
なお、他者が当社と同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後も当社が他者の特許に抵触するような問題が発生しないという保証はありません。
当社としては、このような問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては当社及び特許事務所等を通じた特許調査を実施しており、当社技術が他者の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって、このような知的財産権の侵害に関する問題の発生を完全に回避することは困難であり、第三者との間で特許権に関する紛争が生じた場合又は当社が共同研究開発の相手方と第三者の紛争に巻き込まれた場合には、当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
5.製造物責任のリスクについて
医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な点が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の業務及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、たとえ当社に対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任請求が与えるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業に影響を与える可能性があります。
6.法規制について
当社は、現在医薬品の研究開発を行っておりますが、今後研究開発の成果に基づき医薬品の製造を行うことを目指しています。この場合、日本においては、医薬品医療機器等法その他の関連法規の規制を受けることとなります。この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、有効性及び安全性の確保を目的としており、これらの製造販売には所轄官公庁の承認又は許可が必要となります。
今後、開発の進捗に伴い、適宜承認・許可を取得する必要があります。また、国外においても各国で類似の法律や関連法規の規制を受けることになります。
また、当社のパイプラインについては、開発、製造、販売などにつき各国における健康保険制度に関する法規制及び患者のプライバシーに関する規制その他の規制に服することになります。
さらに、当社が日本国内において臨床試験を計画中のVB-111は遺伝子治療薬であり、カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)に基づく規制当局の承認を受ける必要があり、当該承認を受けられなかった場合、開発計画の遅延等の影響を受ける可能性があります。
7.主要な事業活動の前提となる事項について
主要パイプラインに係るライセンス契約
① 大学等からの知的財産権のライセンスインについて
当社は、大学発の研究成果(シーズ)を医薬品として実用化するために、積極的に大学及び研究機関から知的財産権のライセンスインを行っており、特に主要なパイプラインに係る下記のライセンス契約に関しては、いずれも当社事業の根幹に関わる重要な契約であると認識しております。
現時点では、下記契約の継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、当該契約の継続に支障をきたす要因が発生した場合、あるいは当社にとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない場合は、当社の開発計画及び業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
② 提携先へのライセンスアウトについて
当社は、医薬開発品上市前の研究開発費の負担を軽減し、当社の財務面のリスクの極小化を図るため、(ⅰ)自社開発、(ⅱ)共同研究開発、(ⅲ)ライセンスアウト、(ⅳ)ライセンスインの4パターンのビジネスモデルで研究開発を進めており、現時点でライセンスアウト中の2パイプライン(パクリタキセルミセル(NK105)、シスプラチンミセル(NC-6004))があります。下記のライセンス契約に関しては、いずれも当社事業の根幹に関わる重要な契約であると認識しております。
現時点では、下記契約の継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、当該契約の継続に支障をきたす要因が発生した場合、あるいは当社にとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない場合は、当社の開発計画及び業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
8.配当政策について
当社は創業以降、当期純損失を計上しており、利益配当は実施しておりません。
当社の医薬品事業については引き続き研究開発活動を実施していく必要があるため、研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先する方針です。株主への利益還元については重要な経営課題と認識しておりますが、利益計上された段階において経営成績及び財政状態を勘案し、方針を検討する所存であります。
9.ストック・オプションを含む新株予約権の発行について
当社はストック・オプション制度を採用しており、本書提出日の前月末現在でストック・オプションとして発行している新株予約権は2,119,000株相当(既行使分を除く)であります。このほか、資金調達のために新株予約権を発行しており、第4回無担保転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権は最大で7,431,338株相当、行使価額修正状況付第16回新株予約権1,813,000株相当、第17回新株予約権及び第18回新株予約権それぞれ7,840,000株(いずれも既行使分を除く)を合計すると24,924,338株相当となります。これら発行済の新株予約権が全て行使された場合の潜在株式数は27,043,338株であり、この潜在株式数と発行済株式総数52,514,671株とを合計した株式数(79,558,009株)に対し33.99%となり、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
なお、当社は、今後も優秀な人材確保のためにストック・オプション制度を継続して実施していくことを検討しております。従いまして、今後新株予約権が付与され、権利行使された場合には、1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
また、新たなストック・オプションについては費用計上が義務付けられているため、付与条件によっては、今後のストック・オプションの付与により、当社の業績が影警を受ける可能性があります。
10.為替差損等について
当社は、欧米において臨床試験を行っておりますが、臨床試験に要する費用の支払いについては、主として外貨によって行っており、またそれらの支払いに備えて外貨建て預金を保有しております。また、当社の売上高の一部は外貨により計上される場合があります。従いまして、為替相場の変動は、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社は創業以来、当期純損失を計上しており、利益配当は実施しておりません。
当社の医薬品事業については引き続き研究開発活動を実施していく必要があるため、研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先する方針です。株主への利益還元については重要な経営課題と認識しておりますが、利益が計上された段階において経営成績及び財政状態を勘案し、方針を検討する所存であります。剰余金の配当を行う場合は、年1回期末での配当を考えております。配当の決定機関は株主総会であります。また、当社は会社法第454条第5項の中間配当を取締役会決議で行うことができる旨、定款に定めております。
① 役員一覧
男性7名 女性1名 (役員のうち女性の比率12.5%)
(注)1.取締役 岡野光夫、大橋彰及びミシュラマニッシュは社外取締役であります。
2.監査役 野口勘四郎、森嶋正及び中山美惠子は社外監査役であります。
3.2019年6月26日開催の定時株主総会終結の時から2020年3月期に係る定時株主総会終結の時まで
4.2019年6月26日開催の定時株主総会終結の時から2023年3月期に係る定時株主総会終結の時まで
当社の社外取締役は3名、社外監査役は3名であり、各取締役及び各監査役と当社との間には、いずれも特別の利害関係はありません。なお、社外取締役岡野光夫は当社株式415,200株(うち潜在株式100,000株)、社外取締役大橋彰は当社株式48,300株(うち潜在株式30,000株)、社外取締役ミシュラマニッシュは当社株式45,000株、社外監査役野口勘四郎は当社株式22,800株(うち潜在株式20,000株)、社外監査役森嶋正は当社株式39,000株(うち潜在株式10,000株)、監査役中山美惠子は当社株式100株をそれぞれ保有しております。
当社においては、社外取締役又は社外監査役を選任するための会社からの独立性に関する基準又は方針を定めていないものの、今後の社外役員選任においても、当社にとって有益な人材かつ、当社と人的縁故、取引関係等利害関係のない独立性の高い人材を選任し、経営監視機能強化及びその維持を図る方針です。
社外取締役は医薬事業及び企業経営に精通した人材を登用しております。取締役会に出席し、当社取締役の職務執行の監督を行っております。
社外監査役は財務及び会計、企業経営及び法令、コンプライアンスに精通した人材を登用しております。監査役会において定めた監査方針・監査計画に基づき監査を行い、月に1回監査役会を開催し、常勤監査役からの会社の状況に関する報告及び監査役相互による意見交換を行っております。また、取締役会及び重要な会議に出席し、業務執行が適切に行われていることを確認することで監査業務の有効性の確保を図っております。この他、会計監査人及び当社内部監査室との情報交換並びに常勤取締役と定期的な面談を行っております。
内部監査部門は内部監査計画に基づき、当社全部門の内部監査を実施し、各部門の監査結果を代表取締役社長及び常勤監査役に対し報告を行っております。
当社は非連結子会社1社を有しておりますが、重要性が乏しいため記載を省略しております。
※1 販売費及び一般管理費のうち主要な費目及び金額並びにおおよその割合は、次のとおりであります。
おおよその割合
当事業年度において実施しました設備投資の総額は5,639千円であり、この内訳は主に本社研究所の医薬品製造機器等によるものです。
企業価値 | 15,829 百万円 |
純有利子負債 | -6,565 百万円 |
EBITDA・会予 | - 百万円 |
株数(自己株控除後) | 66,057,375 株 |
設備投資額 | - 百万円 |
減価償却費 | 8 百万円 |
のれん償却費 | - 百万円 |
研究開発費 | 1,793 百万円 |
代表者 | 代表取締役社長CEO 中 冨 一 郎 |
資本金 | 1,843 百万円 |
住所 | 東京都中央区京橋一丁目4番10号 |
電話番号 | 04-7197-7621 |